文化としての学術を護る「学術文化同友会:アルスの会」
アルスの会

 アルスの会を代表して、東日本大地震の犠牲者に慎んで哀悼の意を捧げ、併せて福島原発事故の被害者の重なるご心痛にお見舞いを申しあげます。

新 年もどうぞよろしくお願い致します。  (2012.1.1)
  今年からアルスのホームページ編成を変えます。ここは「アルス論説」にとどめ、
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  「アルス論説」


「科学と社会の在り方」福島原発事故に学ぶ  (アルスタウンミ-ティング シリーズ2の中間報告:中井浩二)

 2011.3.11の福島原発事故は、社会に大きく貢献する画期的な原子核科学の成果が、全く期待に反して社会に災厄を及ぼす結果となり、限りなく社会の混乱を招いています。原子力科学には無縁で疎遠な位置にあった多くの原子核研究者が立ち上がり、それぞれが熱中すべき専門の基礎研究を後回しにして放射線のモニター、放射線汚染物の除染、等に努めています。彼らをこの努力に掻き立てたものは科学者の責任感でありましょうか?、良心でありましょうか? 頭が下がる思いがします。一方で政治家・官僚・マスコミの取り組みには疑問が少なくありません。原発事故を巡って社会に興った議論では玉石混淆でいろいろな意見が出され、中には聞くに堪えぬお粗末なものも少なくなかったと思います。
 アルスの会では、社会における論争から距離をおいて「科学と社会」の接点に生じる様々な問題について考えるため、アルスタウンミーティングのシリーズ2を開き意見を交換する機会を企画してきました。
シリーズは次の3つ段階に分けて進めています。
   [第1部]過去半世紀に亘る原子力開発半世紀の反省
  [第2部] 福島事故の真の原因の追及と対応策の検討
  [第3部]「科学と社会」の在り方についての基本理念の構築
 [第1部]に関しては、わが国の原子力開発創始期の夢と期待とその現実を、社会における様々な情報も取入れつつ論じ合って大筋のまとめを報告し、次の点を強調しました。戦争や原爆に匹敵する大規模の災厄を興す事業を受け入れるには日本社会の体制が未熟であったこと、殊に人材の育成・活用に努力が不足していたこと、結果として米国依存の体質から脱却できなかったことが明らかになりました。これが科学技術立国を謳う国の姿であったのかと思わされます。
 昨年末から議論は[第2部]に入りました。福島事故の原因の解析は社会において様々に進められ、事故の後始末についても多くの問題が社会問題化しています。その中で、特に大きなテーマは原子力事業の今後の在り方です。原子力推進か、脱原子力かという二極に別れた議論であり、論者がこの二極に分類されるという不愉快な関係が生じています。日本に限ったことではありませんが、ことの賛否を問う議論が生じた時、賛-否? 白-黒? 或いは 0-1? のように議論が二極化してしまいます。議論が二極化するのは当たり前ですが、その際、意見を述べる人を白-黒に色づけして議論をすることが多いのは困ったことです。問題の本質を見落とすことになりかねません。原発に関する一連の議論の中で最も注意しなければならないのは、反科学の風潮が生まれることです。科学技術に憧れる若い人達の気持ちに水をかける結果になってはなりません。
 これまでの議論では、人材の養成が最大の課題です。原発を継続するには絶対必要であるし、脱原発を目指すとしても、即座に原発を全て廃止しない限り現状の陣容で50基を超える原発の運転を続けることは危険なことです。体制の立て直しをする方策が出されていません。このような状況で原子力業界に身を投じようという若者が育つとは思えません。優れた人材の育成には,若者に夢を語ることが大切です。それにはどのようなこと有るか考えることが望まれます。
 次に大切な課題は、核廃棄物の処分であると考えています。脱原発の道を選ぶとしても、更に継続して原発を推進するとしても、これまでに蓄積された使用済み核燃料を処分しなければなりません。さらに日本だけでも50基もある原発の最終処分は未解決の大問題であります。これは半世紀に及ぶ原子力事業が遺した負の遺産であり世界中が抱えている問題であります。昨年末にRCNPの研究会の特別セッションとして開いた第2部第1回ミーティングで採り上げ勉強しました。これまでにも研究は進んでいて巨大な研究資金が投入されていますが、専門化が進み他分野の研究者の智慧が参入し難い状況です。先日のミーティングでも廃棄物の地層処分に対して、深海処分の可能性が提案されました。即座に反対の声が挙りましたが、広く議論されるべき問題です。この人類が抱えてしまった大問題に取り組もうという若者が出てきてほしいと強く感じました。
 アルスの会は,その他にも重要な問題に取り組むべきですが、[第2部]では、先ずこの二つのテーマを考え、タウンミーティングやテレビ討論会を重ねたいと思って居ります。そして、[第3部]ではシリーズの一連の努力を総括し、その中から特に科学と社会の在り方について,まとめたいと考えて居ります。皆様のご協力•ご参加をお願い致します。